頭痛外来
頭痛外来
日常的に頭痛に悩まされている、いわゆる「頭痛持ち」の方は多く、つらくても「頭痛くらいで…」という思いから医療機関を受診せず、市販薬を服薬して対処されている方も少なくありません。頭痛外来は、そのようなつらい頭痛に悩まれている方々のための窓口であり、様々な頭痛に対して、診察、検査を行い、その結果により頭痛の種類を診断し、適切な治療法の選択を行います。気になる頭痛、慢性的な頭痛、いつもと少し違う頭痛などありましたら、お気軽にご相談ください。
頭痛は、他に病気が隠れているのではなく、頭痛を繰り返すことが問題である慢性頭痛症(一次性頭痛)と脳腫瘍、クモ膜下出血、髄膜炎などの脳や頭部の病気などが原因で起こる頭痛(二次性頭痛)に分けられます。
急激に発症して、これまでに経験したことがないほどのひどい頭痛や手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、しゃべりにくいなどの症状を伴う場合は、至急脳神経外科を受診して正確な診断を受ける必要があります。また、頭痛が数週間続いて悪化してくるような場合は脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などの可能性もあるので注意が必要です。
数年以上前から同じような頭痛を繰り返している場合は慢性頭痛症ですので、生命の危険はないことが多いといえます。慢性頭痛症の代表的なものとしては、片頭痛や緊張型頭痛があります。慢性頭痛症は危険ではないとはいえ、難治性で、日常生活・仕事・家事・学業などに支障をきたすこともあります。必ずしも全ての頭痛に対して完全に痛みが取れるような治療法があるわけではありませんが、生活習慣の改善や、使用可能な治療薬、治療法を駆使して、頭痛による日常生活などへの悪影響を最小限にするよう努めていきます。
頭痛治療薬の服用が続くと薬物の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)を引き起こす可能性が高くなるため、そうなる前に適切な治療を選択する必要があります。
一次性頭痛は、片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛(trigeminal autonomic cephalalgias : TACs)、その他の一次性頭痛に分けられます。
その中で最も多いのは緊張型頭痛、次いで片頭痛ですが、実際に外来を受診される患者様では片頭痛あるいは片頭痛疑いの方がほとんどとの報告があります。
片頭痛は、日常生活に支障をきたす一次性頭痛で比較的頻度の高い疾患で、女性の方が男性より4倍多いといわれています。
「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」に分類されます。前兆は頭痛より前に起こる症状で、キラキラと何かが見える、ギザギザの光が見える(閃輝暗点)といった視覚性のものがほとんどですが、チクチクする・感覚が鈍くなるといった感覚症状、言葉が出にくくなるといった言語症状などがあります。特殊な前兆として、半身の脱力感や回転性めまいを認める場合もあります。多くの場合、5〜60分で前兆が終わり、続いて頭痛が始まります。頭痛が始まる前に、何となく頭痛が起こりそうな予感や気分の変調、眠気、疲労感、集中力低下、頚部の凝りなどを自覚することがありますが、これは前兆とは区別して予兆といいます。
片頭痛による頭痛は、発作的に起こり4〜72時間続き、片側性のズキズキと脈打つような拍動性の痛みが特徴です。片頭痛の名称の由来は片側が痛むこととされていますが、実際には4割ほどの患者様が両側性の頭痛を経験しています。また、非拍動性の片頭痛もあります。吐き気や嘔吐を伴うことも多く、発作中に感覚が過敏となり、普段は気にならない光や音、臭いを不快と感じることもあります。階段昇降や日常的な動作で頭痛が増強するため、寝込んでしまい仕事や学業に支障をきたすこともあります。
片頭痛の発症機序は完全に解明されていないものの、頭蓋内や硬膜の血管に分布している三叉神経終末が、何らかの刺激により興奮し、血管作動性物質・神経伝達物質(CGRPなど)が放出され、血管拡張や神経原性炎症が誘発されることにより痛みが生じる三叉神経血管説が有力と考えられています。
片頭痛の治療には、頭痛が起こった時になるべく早く頭痛を鎮めるための急性期治療(頓挫療法)と頭痛の回数や強さを抑えたり、急性期治療薬が効きやすくなるようにしたりするための予防療法があります。
急性期治療の代表的な薬剤としてはトリプタン製剤があり、イミグラン(スマトリプタン)、ゾーミッグ(ゾルミトリプタン)、レルパックス(エレトリプタン)、マクサルト(リザトリプタン)、アマージ(ナラトリプタン)の5種類が承認されています。同じトリプタン製剤でも効きの早さや持続時間などに違いがありますので、患者様により使い分けが必要となります。また、トリプタン製剤には血管収縮作用があるため、狭心症、心筋梗塞といった虚血性心疾患、一過性脳虚血発作や脳血管障害の既往のある方、閉塞性動脈硬化症などの末梢血管障害のある方、コントロール不良の高血圧症の方などには使用ができません。2022年に承認されたジタン製剤のレイボー(ラスミジタン)は、血管収縮作用がないため、トリプタン製剤が使用できない患者様にも投与が可能となっています。さらにトリプタン製剤は服用するタイミングが遅すぎると効果がありませんが、レイボーは内服が遅れても効果があるといった特徴があります。
予防療法は、片頭痛発作が月に2回以上または生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある場合に行われることがあり、カルシウム拮抗薬、抗てんかん薬、β遮断薬、抗うつ薬、漢方薬などが使われます。また、2021年にCGRP関連予防薬といわれる新しい片頭痛予防薬が承認されました。エムガルディ(ガルカネズマブ)、アジョビ(フレマネズマブ)、アイモビーグ(エレヌマブ)がそれにあたり、いずれも皮下注射で投与するもので、従来の予防療法などを行っても、月4回以上片頭痛発作がある方が対象となります。
緊張型頭痛は頭痛の中で最も頻度が高く、その頻度により反復性(月に15日未満)と慢性(3ヶ月を超えて、平均して月に15日以上)に分類されます。頭痛は30分から7日間続き、圧迫されるあるいは締め付けられるような非拍動性の頭痛で、多くは両側性です。頭痛の程度は軽度から中等度といわれていますが、慢性のものは日常生活に支障をきたすこともあり、難治性の場合が多いです。また反復性と慢性のものでは頭痛発症のメカニズムが異なるのではないかと考えられていますが、まだその詳細に関しては解明されていません。
頻度が少なく、日常生活に支障がない場合は治療の必要はありませんが、頭痛によって日常生活が制限される場合などは治療が必要です。反復性のものは鎮痛薬が有効な場合が多く、鎮痛薬の使用が月に数回程度の方は予防薬の必要はありません。頻度の多い反復性や慢性緊張型頭痛では、抗うつ薬などの予防薬の内服、ストレスマネージメント、リラクゼーション、理学療法などがすすめられます。頭痛体操なども有効といわれています。
TACsは、一側性に限局した比較的重度の頭痛発作に自律神経症状を伴うことを特徴とした頭痛です。群発頭痛、発作性片側頭痛、短時間持続性片側神経痛様頭痛発作、持続性片側頭痛に分類されます。
TACs発症メカニズムはまだ解明されていませんが、頭痛発作中に視床下部後部灰白質の活性化を認めることが分かっており、何らかの関わりがあるといわれています。
痛みの部位は、片側に限局した眼窩・眼窩上部といった主に三叉神経領域に好発することが共通しています。頚部や肩、上腕などに痛みを認める場合や歯にも痛みを感じることがあります。
痛みの持続時間は、病型により様々で、瞬間的なものから数日続くものまであります。随伴する自律神経症状とは、結膜充血や流涙のことになります。
TACsは、インドメタシン、高濃度酸素、トリプタン製剤などの治療に対する反応がポイントとなり、必要に応じて適切な治療法を選択します。
この中には、一次性咳嗽時頭痛(咳やいきみにより誘発される頭痛)、一次性運動時頭痛(運動によって誘発される拍動性の頭痛)、寒冷刺激による頭痛(かき氷など冷たいものを食べた時や冷水への飛び込みなどで誘発される頭痛)、睡眠時頭痛(睡眠中のみに起こり、痛みで起きてしまうため、めざまし頭痛といわれます)などが含まれます。
二次性頭痛は病気などが原因で起こる頭痛です。見逃すと危険性が高い病気には、くも膜下出血、脳腫瘍、脳出血、脳動脈解離などがあります。
「経験したことがない突発性で強烈な痛みがある頭痛」、「徐々に痛みが強くなるいつもと違う頭痛」などは二次性頭痛の可能性があります。ためらわずに医療機関を受診してください。
頭痛に加え、以下のような症状が伴う場合には、脳の病気が隠れている可能性があります。速やかな受診が必要です。
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