脳神経外科
脳神経外科
脳神経外科とは、脳、脊髄、末梢神経系およびその付属器官(血管、骨、筋肉など)を含めた神経系全般の疾患について診断、治療を行う診療科です。精神的側面から診断・治療を行う精神科や心療内科とは異なります。
脳神経外科の主な対象疾患としては、脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷、脊椎・脊髄疾患、てんかん・顔面けいれん・三叉神経痛などの機能的疾患、水頭症などがあります。その症状は、頭が痛い、手足がしびれる、手足に力が入りにくい、めまいがする、ろれつが回らない・しゃべりにくい、けいれんする・意識を失う、物が二重に見える・視野が欠ける、物忘れが多い、顔の片側が痛いなど多岐にわたります。
気になる症状があるけれど、何科を受診して良いか分からないといった場合などお気軽にご相談ください。どのような病気かを診断し、脳神経外科以外での治療や検査が必要な場合は適切な診療科にご紹介いたします。
脳の血管が急に詰まったり、破れたりして、脳の機能が障害される病気の総称で、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血が含まれます。日本で最も多いのが脳梗塞で、脳卒中の7割を占め、次いで脳出血が2割、くも膜下出血が1割といわれています。
脳卒中発症に大きく関わる危険因子として、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、非弁膜症性心房細動などが重要ですが、遺伝的要因もあります。暴飲暴食などの生活習慣の悪化、ストレスなどが加わって危険因子が形成されていきます。ですから、健康診断や人間ドック、脳ドックを受けることにより高血圧症、脂質異常症、糖尿病などを早期発見し、生活習慣を改善することにより脳卒中の予防に努めることが重要です。
脳梗塞とは、脳の血管が詰まったり、詰まりかかったりすることにより、脳に必要な血液が供給されなくなることによって脳の組織が損傷を受ける病気です。損傷を受ける脳の場所により、意識障害、手足の麻痺、言語障害、視野障害など様々な症状が見られます。
脳梗塞には様々な分類法がありますが、高血圧症、脂質異常症や糖尿病などの影響により血管の内部が狭くなることにより起こる「血栓性」と、血の塊が血管の中を流れてきて脳の血管が詰まる「塞栓性」に分けられます。
どの発症機序でも、血栓溶解療法(血栓を溶かす薬を投与する方法)や血栓回収療法(脳の血管に詰まった血栓をカテーテルを用いて直接取り除く方法)といった超急性期治療を行うことにより、脳に再び血液を供給できれば後遺症を軽くすることができると報告されています。超急性期治療を受けるためには、症状が出現してからの時間が重要となりますので、早急に医療機関を受診してください。
また、発症後は、抗血小板剤や抗凝固薬の服薬を継続したり、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の管理を行ったりすることにより、脳梗塞再発予防に努める必要があります。
脳出血とは、脳の中に出血する病気です。脳出血の7割以上は高血圧が原因です。脳の中の細い血管の壁が動脈硬化で脆くなり、破裂することによって起こると考えられています。脳の中に血液の固まり(血腫)ができ、その周囲の脳を破壊したり、圧迫したりすることによって、意識障害や手足の麻痺など様々な症状が出現します。血腫により頭蓋内圧が上昇するため、脳梗塞と比較すると、頭痛や嘔吐といった症状が見られることが多いです。発症や再発を予防するためには血圧コントロールが重要となります。
また、高血圧以外の脳出血の原因として、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、海綿状血管腫、静脈性血管腫、脳腫瘍などがあります。
高血圧性脳出血の場合、小さいものであれば手術が必要となることはほとんどありませんが、 大きなものや脳室といわれる髄液が循環している部位に出血がおよんだ場合、手術が必要となることがあります。高血圧以外が原因の場合は、出血の大きさだけでなく、原因となった病気の再出血のしやすさなどを考慮し手術適応を判断します。
くも膜下出血とは、脳の表面のくも膜下腔と呼ばれる部分に出血が生じた状態で、ケガによる外傷性と脳動脈瘤や脳動静脈奇形などの破裂により起こる脳卒中があります。
外傷性くも膜下出血は、軽症の場合には症状がないことも多く、それ自体に対して手術が必要となることはほとんどありません。
脳卒中の場合は、突然の激しい頭痛が特徴で、重症の場合、意識障害やすぐに生命に関わることがあり、手術が必要となることがほとんどです。脳動脈瘤が破裂して起こることが多く、成人の2〜4%程度が脳動脈瘤を有しているといわれています。脳動脈瘤は再破裂しやすいため、再破裂予防のため、開頭手術(脳動脈瘤頚部クリッピング術など)やカテーテル手術(コイル塞栓術)を行います。様々な要素を考慮した上で、どちらの治療が適切かを選択します。また、脳の血管が一時的に細くなる「脳血管攣縮」が起こり脳梗塞を起こしやすい状態が発症後約2週間続くため、集中治療が必要となります。
発症すると非常に重篤な疾患ですので、発症を予防することが重要と言えます。脳動脈瘤に関しては遺伝的要素も指摘されているため、近親にくも膜下出血を発症した方や脳動脈瘤を指摘された方がいる場合には脳ドック受診をお勧めします。
脳腫瘍は頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称です。様々な種類の腫瘍があり、原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍に分類されます。
原発性脳腫瘍は、脳細胞や脳を包む膜、脳神経などから発生した腫瘍で、主に神経膠腫(グリオーマ)、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、中枢神経系原発悪性リンパ腫などが挙げられます。
転移性脳腫瘍は、肺がんや乳がん、大腸がんなど、他の臓器で発生したがんが血流によって脳に転移したものです。
腫瘍の周りに脳浮腫という脳のむくみが生じたり、腫瘍が脳を圧迫したりすることにより、手足の麻痺や言語障害、視野障害など様々な症状が出現します。
治療は脳腫瘍の種類や患者様個々の状態に合わせて選択されます。
顔面けいれんは、自分の意志とは関係なく顔の半分がピクピクとけいれんする病気です。
通常、目の周囲から始まり、徐々に頬や口元へ広がります。最初は緊張した時などに時々起こるだけですが、重症になるとけいれんが持続し、さらに顔半分が引きつった状態になり、目が開けられなくなることもあります。眼を強く閉じて開くと、まぶたの下にけいれんが誘発されたり、口元を引き伸ばすような顔をすると、まぶたにけいれんが出たりすることも特徴です。
治療は、ボツリヌス毒素を局所に注射する方法や、顔面神経を圧迫している部分を外科的処置で治療する方法があります。抗てんかん薬などの薬物療法を行うこともありますが、効果は十分ではなく、ボツリヌス毒素療法や手術ができない場合や希望されない場合に限られます。
もやもや病は、日本人に多い進行性に脳の血管が閉塞する病気で、厚生労働省の指定難病になっています。発症の原因として遺伝子が関与しているとの指摘がありますが、さらに何らかの環境要因が作用して発症するといわれており、未だはっきりとした原因は不明です。両側(片側の場合もあります)の内頚動脈終末部が狭窄あるいは閉塞し、その周囲にもやもや血管といわれる異常血管網が認められるため、この名称がつけられました。
無症状のものから、脳室内出血、脳出血、くも膜下出血で発症する脳出血型、一過性脳虚血発作や脳梗塞で発症する脳虚血型、けいれんで発症するてんかん型があります。
治療は、抗血小板剤や抗けいれん剤の服薬といった内科的治療や脳血行再建術といった外科的治療が行われます。
てんかんは脳内神経細胞の過剰な電気的興奮に伴い、けいれんや意識障害などの発作を繰り返し起こす脳の病気です。
てんかんは、頭部外傷や脳卒中、脳腫瘍など原因が明らかな「症候性てんかん」と明らかな原因のない「特発性てんかん」に分けられます。また、てんかん発作は脳のある部分から発作が始まる「部分発作」と最初から左右の脳全体から発作が起こる「全般発作」に分けられます。
治療は、抗てんかん薬により発作が起きないようにすることが基本となります。てんかん発作のタイプによって、用いるべき薬が異なりますので、正しく診断することが重要です。
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