手足がしびれる
手足がしびれる
正座をした際に足のしびれを自覚した方は多いと思います。正座をしている最中に起こる感覚が鈍くなったような感じと、足を崩した後で感じる痛みを感じるようなしびれとは原因が異なるといわれています。前者は、直接神経が圧迫されることにより起こり、後者は血管が圧迫されることによる血流低下と、足を崩すことによって血流が再開することが原因とされています。つまり、しびれなどの感覚異常は、神経の異常や血管の異常から起こるといえます。
神経の異常によるものとしては、脳梗塞・脳出血・脳腫瘍など脳が原因のもの、変形性脊椎症や脊椎椎間板ヘルニア・後縦靭帯骨化症などの脊髄が原因のもの、糖尿病による多発性末梢神経障害や手根管症候群などの末梢神経が原因のものがあります。
血管が原因となるものとしては、動脈硬化性LEAD(閉塞性動脈硬化症)やバージャー病が挙げられます。
変形性脊椎症は、通常は加齢により生じるもので、軽症の場合は無症状ですので、特に問題はありません。変形が進行してしまうと、椎間関節に変形がおよび可動域制限や慢性的な疼痛が出現します。また、神経根を圧迫し脊椎症性神経根症となったり、脊髄や馬尾神経の通り道が狭くなって脊柱管狭窄症となったりすることにより、しびれや痛みなどの感覚異常や筋力低下が出現することもあります。
基本的には自然治癒する疾患ですが、症状が強いときは消炎鎮痛剤の内服や、筋力低下が著しい・強い痛みがあるなど日常生活に支障をきたす場合は手術を検討します。
椎間板は、背骨に加わる衝撃を緩和するクッションの役割を担っています。椎間板は、中心部にゼリー状の髄核と呼ばれる柔らかい部分と、その周囲の線維輪と呼ばれる部分でできています。この椎間板の内容物が押し出され突出することを脊椎椎間板ヘルニアといいます。
原因としては加齢や繰り返される外力が多いですが、悪い姿勢での作業や喫煙が原因となることもあります。例えば、重いものを持ち上げるとか長時間の運転などがこれにあたります。
症状は、痛みや痺れといった感覚障害に加え、筋力低下も認められます。
通常は消炎鎮痛薬や神経痛に対する内服薬が処方されますが、痛みが強い時は安静やコルセットの装着、神経ブロック療法が行われます。こういった治療で痛みが改善しない場合や下肢の脱力、排尿・排便障害が出現した場合には手術が行われます。また、ヘルニアを縮小させる薬剤を椎間板内に注射する方法もあります。
後縦靭帯は、脊椎を支え安定させる役割を果たしますが、この靭帯が異常な骨化を起こし、脊椎の後方に骨が形成される病気を後縦靭帯骨化症といいます。。50歳前後の男性に発症することが多く、糖尿病や肥満症の方に発症しやすいとされていますが、明確な原因は解明されていません。
主な症状は痛み、しびれになりますが、症状が進行すると手足の麻痺や感覚障害、排尿・排便にも障害がみられるようになります。
症状が軽微であれば、消炎鎮痛剤や筋弛緩薬の内服や安静で改善しますが、症状が改善しない場合や重度の場合は手術を検討する必要があります。
末梢神経は、脳や脊髄からの信号を体の各部位に送る役割を果たし、感覚神経、運動神経、自律神経に大きく分けられます。
末梢神経障害の原因は様々で、糖尿病、自己免疫性疾患(ギランバレー症候群など)、遺伝的要因、感染症、ビタミンB1欠乏などの栄養不良、鉛やベンジンなどの中毒、薬剤性、および神経障害性疾患などが挙げられます。
症状としては、しびれや痛み、手足に力が入らないなどの筋力低下、発汗障害、便秘や下痢などがあります。
手首の内側にある手根管という骨と靭帯で囲まれたトンネルの中で正中神経が圧迫されることによって引き起こされる神経障害です。
原因不明なものが多いですが、仕事やスポーツによる手の使いすぎ、ケガ、透析を長期間受けている、関節リウマチ、糖尿病、妊娠などが原因となることもあります。
症状は、初期には第2、3指のしびれ、痛みが出現し、その後、第1指、第4指の第3指側半分にまで広がります。手を振ることや指を曲げ伸ばしすることで症状が軽減します。手がこわばる感じもあり、悪化すると母指球といわれる第1指の付け根が痩せてきて、細かな作業が難しくなります。
治療は、消炎鎮痛剤やビタミンB12などの内服治療や消炎鎮痛剤の塗布、シーネ固定などの安静、などが行われます。難治性のものや、腫瘍が原因などの場合は、手術が必要となります。
手足には他にも神経が通るトンネルがあり、肘部管症候群、足根管症候群といった神経障害を起こすことがあります。
つり革につかまる時などのように腕を挙げる動作により、上肢のしびれや肩・腕・肩甲骨周囲の痛みが出現する病気です。
血管や神経は首から腕に向かう際に胸郭出口と呼ばれる場所を通りますが、この胸郭出口という場所には狭くなっているところがいくつかあり、その部分で血管や神経が圧迫されることによって発症します。
なで肩の女性に多くみられますが、逆に筋肉を鍛えた男性が発症することもあります。
症状は、腕や手指の小指側に沿って疼くような感じや刺すような痛み、しびれ感などの感覚障害や手の握力が低下する・細かな動作が行いにくいなどの運動障害があります。
症状を悪化させるような腕を挙上するような動きを制限し、重いものを持ち上げるような運動やリュックサックで重いものを担ぐことなどを避けるようにします。症状が軽い場合は、僧帽筋や肩甲挙筋の強化運動訓練を行い、安静時には肩を少しすくめたような姿勢をとるようにしてもらいます。消炎鎮痛剤、血流改善剤やビタミンB1などの薬物療法も行われることがあります。
頚肋といわれる下位頚椎から出ている肋骨の遺残が原因となっている場合は、手術が必要となることもあります。
心臓を栄養する冠動脈以外の主に上下肢の閉塞性動脈疾患のことを末梢動脈疾患といいます。下肢のものはlower extremity artery diseaseの頭文字をとってLEADと言われるようになりました。動脈硬化によって起こる動脈硬化性LEADが、閉塞性動脈硬化症(ASO)といわれていた疾患と同じものになります。
男性に多く、喫煙、糖尿病・高血圧・脂質異常症といった生活習慣病、慢性腎機能障害などが危険因子となります。
軽度の場合は無症状ですが、進行すると歩行中に起こる下肢の痛みやしびれ(間欠性跛行)、足の冷え、痛みなどがみられるようになります。
バージャー病は、末梢動脈が炎症により閉塞してしまう病気です。
明らかな原因は不明ですが、喫煙されているかたがほとんどです。
主な症状は、手足の冷え、しびれ、痛みです。レイノー症状といわれる寒冷刺激によって皮膚の色が蒼白あるいは紫色になる症状も認められ、進行すると間欠性跛行や安静時にも強い痛みが出現するようになります。さらに進行すると手足に潰瘍ができ、壊死に至ります。
同じような症状は動脈硬化性LEAD(閉塞性動脈硬化症)にも認められますが、バージャー病は30〜40歳代の比較的若い男性に多いですが、動脈硬化性LEADはより高齢の方に多いという特徴があります。
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