頭や顔が痛い
頭や顔が痛い
頭痛は、頭痛そのものが病気である一次性頭痛と何らかの病気などが原因となる二次頭痛に分けられます。
一次性頭痛は、片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛(trigeminal autonomic cephalalgias : TACs)、その他の一次性頭痛に分類され、二次性頭痛は、風邪や二日酔いなどの日常にありふれたことが原因となることがほとんどですが、くも膜下出血や脳腫瘍など危険な病気が原因となる頭痛もあります。
危険な頭痛を疑う特徴として、米国神経学会より「SNNOOP10(スヌープテン)リスト」という以下の15項目が報告されています。
発熱を含む全身症状
項部硬直(首が硬くなる)、意識が悪くなるなどの症状が現れた場合は、髄膜炎・脳炎を疑う必要があります。
新生物の既往
がんなどの悪性腫瘍の既往のある方、特に嘔吐やめまい、ふらつきなどを伴う方は、脳転移を疑い、MRIなどの検査を早急に行うことをお勧めします。
神経脱落症状または機能不全(意識レベルの低下を含む)
手足の麻痺やしびれ、意識がぼんやりするなどの症状がある場合は、軽い頭痛でも脳の病気による頭痛を考える必要があります。
突然に発症する頭痛
1分以内に痛みの強さがピークに達するような突然発症する頭痛は、くも膜下出血をはじめとする脳血管の病気による可能性があるため、脳血管を含めた検査が必要です。
高齢(50歳以降)で初発の頭痛
頭痛パターンの変化または最近発症した新しい頭痛
姿勢によって変化する頭痛
立ったり座ったりで頭痛が増強し、横になると改善する場合、脳脊髄液減少症が疑われます。
くしゃみ、咳または運動により誘発される頭痛
小脳や脳幹の病気やキアリ奇形などで発症することがあります。
乳頭浮腫
眼球内にある視神経が腫れた状態をいいますが、眼底検査を行うことでわかります。脳腫瘍などの頭蓋内圧亢進時に見られ、嘔吐を伴うことがあります。
進行性の頭痛、非典型的な頭痛
妊娠中または産褥期
自律神経症状を伴う頭痛
流涙や結膜充血は三叉神経・自律神経性頭痛の症状でもありますが、緑内障や角膜障害など眼科の病気と鑑別する必要があります。
外傷後に発症した頭痛
頭部外傷後で意識がぼんやりとしているような場合には、脳挫傷や頭蓋内出血が起こっている可能性があります。特に高齢者では、受傷後3週間から2、3ヶ月経過して慢性硬膜下血腫を発症することがあります。
HIVなどの免疫系病態を有する患者
鎮痛剤使用過多もしくは薬剤新規使用に伴う頭痛
上記に当てはまるからといって全てが危険な頭痛とは言えませんし、また当てはまらない危険な頭痛もありますので、「いつもと違う頭痛」を感じたら早急に受診することをお勧めします。
また、顔面に痛みが出現した場合、副鼻腔炎やむし歯、歯周病などが原因のこともありますが、三叉神経痛により痛みが生じている可能性があります。
薬物の使用過多による頭痛とは、片頭痛や筋緊張型頭痛といった一次性頭痛をもつ方が急性期または対症的頭痛治療薬を3ヶ月を超えて定期的(治療薬の種類により月に10日以上のものや15日以上のものがあります)に乱用した結果として1ヶ月に15日以上起こる頭痛のことをいいます。
薬物乱用の中止により、頭痛が消失することがほとんどです。
脳動脈壁は内膜・中膜・外膜の3層構造となっており、内膜と中膜の間に内弾性板があります。何らかの原因で内膜に亀裂が入ることにより、血管壁内に血流が入り、脳の血管壁が裂けることを脳動脈解離といいます。
発症時に頭痛、頚部痛を伴うことが多く、一過性脳虚血発作や脳梗塞、くも膜下出血で発症することもあります。
原因は外傷性、非外傷性に分けられます。特発性(原因不明)であることも多いのですが、繊維筋性異形成、Marfan症候群、Ehlers-Danlos症候群などの血管の膜が弱くなる病気が関わっていることもあります。
脳膿瘍とは、脳の中に膿がたまった状態のことです。
原因としては、副鼻腔炎や中耳炎、むし歯などの頭部の感染症から直接波及したもの、心内膜炎や肺化膿症などが原因となって血流を介して感染したもの、頭部の外傷や手術後に生じたものなどがあります。
脳膿瘍の主な症状は頭痛、吐き気、痙攣で、他に脳膿瘍のできた部位によって半身麻痺や言語障害などを伴います。
治療は、抗生物質の投与や排膿を目的とした外科治療が行われます。
髄膜炎・脳炎とは、細菌やウイルスなどが髄膜・脳に侵入し炎症を起こす感染症の一種です。
主な症状は発熱、全身倦怠感、食欲低下、頭痛、嘔気、嘔吐です。脳炎では、けいれんや興奮したり、異常な行動をしたりといった精神症状がみられることもあります。
治療は感染した微生物に対して効果のある抗生物質や抗ウイルス剤などを投与します。
脳脊髄液減少症とは、脳や脊髄の周囲を流れている脳脊髄液が何らかの原因で減少することによって、頭痛を初めとする種々の症状が出現する疾患です。
原因としては、怪我や腰椎穿刺・手術といった医原性などがありますが、原因不明のものもあります。脳脊髄液が減少する原因としては、脳脊髄液が硬膜の外に漏出するもの(脳脊髄液漏出症)と、脳脊髄液の漏出によらないもの(脱水などによる髄液産生減少、髄液吸収亢進など)が考えられています。
主な症状は頭痛ですが、通常の頭痛とは異なる特徴があります。立ったり座ったりすることにより頭痛が増悪し、横になることで頭痛が軽減・消失します(起立性頭痛)。頭痛のほかに、頚部痛、めまい、吐き気、全身倦怠感、自律神経症状、耳鳴り、うつ、睡眠障害などを伴うこともあります。
三叉神経は、顔面の感覚を脳に伝える神経です。三叉といわれる理由は、前額部などの感覚を司る眼神経、頬などの感覚を司る上顎神経、したあごの感覚を司る下顎神経と三つの神経に分かれているからです。その三叉神経が何らかの原因で痛みを感じるようになることが三叉神経痛です。
三叉神経痛は、帯状疱疹後神経痛、腫瘍や血管奇形などによる三叉神経の圧迫などが原因で起こることや原因不明のものもありますが、血管による三叉神経の圧迫が原因のことが多いです。
症状は、ほとんどが片側の顔面の瞬間的な痛み、あるいは続いても多くは2分以内の痛みであり、電気ショックのような、突き刺すようななどと表現される激痛です。「顔を洗う」、「歯を磨く」、「髭を剃る」、「食事をする」などの日常動作で痛みが誘発されるようになります。
MRIで血管による三叉神経の圧迫が証明された場合には、手術により神経の圧迫を解除することにより症状が改善します。また、手術を希望しない、あるいは手術が困難な場合はテグレトール(カルバマゼピン)を初めとする内服治療や局所麻酔薬などによる神経ブロック、放射線治療により症状の改善を図ります。
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