頭をぶつけた
頭をぶつけた
頭をぶつけることは、日常生活やスポーツなどでよく経験され、ケガで受診される患者様の約2割は頭部外傷によるものとの報告もあります。
頭部外傷は、軽症、中等症、重症に分類されますが、ほとんどのケースが軽症で、短期間で症状が改善し後遺症もなく回復します。一方、受傷直後の症状は軽くても、重症化することが少なくはありません。
頭部打撲後に、意識がはっきりしておらず朦朧としている、けいれんを起こした、健忘が続いている、ケガをする30分以上前のことを覚えていない、ひどい頭痛がある、嘔吐を繰り返す、麻痺・しびれ・言語障害など脳の損傷が疑われる症状がある場合は、早急に医療機関を受診しCTなどの検査を行うべきです。
また、高所からの転落やスピードのある事故、高齢者の場合にも注意が必要です。
ただし、小児、特に乳幼児の場合は放射線被曝といった問題もあるため、安易にCTを撮影することはお勧めできません。
脳震盪は衝撃によって脳が揺さぶられることにより生じる脳の機能障害を指し、CTやMRIなどの画像上、異常は認められません。
頭部打撲後に、意識消失した(一瞬でも)、倒れて動かない・立ち上がるのが遅い、ぼーっとしている、動きが遅い、ふらふらしている、受け答えが遅い・適切でない、人格の変化、ケガの前後の記憶がないなどの症状が認められた場合には脳震盪が疑われます。
症状は通常短時間で消失しますが、数日から数週間におよぶ場合もあります。
脳震盪後、回復するまでに頭部打撲を繰り返すことは危険ですので、しばらくは安静にしなければなりません。
スポーツの場合、競技種目ごとの特性に合わせた休止期間の判断が必要ですし、復帰する場合も段階的に運動の強度を上げていく必要があります。
頭蓋骨骨折には、線状骨折や陥没骨折、頭蓋底骨折などがあります。
線状骨折は、いわゆるヒビが入った状態のことで、これ自体で治療が必要となることはほとんどありませんが、骨折部の直下に急性硬膜外血腫を形成することがあり、経過観察する必要があります。3歳以下の小児の場合、稀に骨折の幅が次第に拡大していく進行性頭蓋骨骨折となることがありますので、より注意して経過観察することが必要です。
陥没骨折は、骨片が内側に陥没している骨折のことをいいますが、軽度の場合は治療の必要はありません。陥没した骨片が脳に影響を及ぼす、美容上の問題があるなどの場合には手術を行うことがあります。
頭蓋底骨折は、文字通り頭蓋骨の底の部分に骨折がある状態のことをいいます。耳の後ろのアザ(バトル徴候)や目の周りのアザ(パンダの目徴候)がみられることがあります。骨折した部位によっては、脳の周りを流れている髄液が鼻や耳から漏出する髄液漏となることもあります。
急性硬膜外血腫とは、頭蓋骨と脳を包む一番外側にある膜の硬膜との間に出血した状態のことです。頭蓋骨骨折を伴うことがほとんどで、骨折の直下に認められます。
血腫量が少ない場合は、手術の必要はありませんが、血腫量が多く、脳の圧迫が著明な場合には緊急手術が必要です。
急性硬膜下血腫とは、脳を包む膜の硬膜とくも膜の間に出血した状態のことです。外傷性がほとんどですが、稀に血管の奇形や血液をサラサラにする薬の影響で発症することもあります。
血腫が少量の場合、手術の必要はありませんが、血腫の増大がないか経過観察が必要となります。血腫量が多く、脳の圧迫が強い場合には、緊急手術が必要となります。
脳挫傷とは、外傷による脳そのものが損傷を受けた状態のことをいいます。急性硬膜外血腫や急性硬膜下血腫と異なり脳自体が傷ついてしまっているため、その壊された部位によって麻痺や言語障害など様々な症状が出現します。
症状は軽度から重度まで様々で、軽度の場合、頭痛、吐き気、めまい、または一時的な意識障害などがみられますが、重度の脳挫傷では、意識障害が長く続くことがあります。
血腫の大きさなどにより救命を目的として手術が必要となることもありますが、壊された脳の機能が手術によって回復するわけではありませんので、その後も重篤な症状が後遺することもあります。
受傷後には明らかな症状がなくても3週間〜2,3ヶ月が経ってから、手足の筋力低下、歩行障害、認知症と間違えるような症状などが出現したりすることがあります。高齢者に多く、そういった症状がみられた場合、慢性硬膜下血腫の可能性が高いと考えられます。
定期的な検査などで発見される場合もありますが、症状が出現している場合は、手術が必要となることがほとんどです。
軽い頭部外傷で起こるため、頭部打撲をしたことを覚えていないこともあります。上記のような症状がある場合は、一度検査をすることをお勧めします。しかし、稀に高齢とはいえない年代の方でも発症することがありますので、上記のような症状がある場合はお気軽にご相談ください。
TOP