けいれんする・意識を失う
けいれんする・意識を失う
けいれんは、自分の意思とは関係なく体の一部が勝手に動いてしまう状態の一種です。
全身にけいれんが起こった場合は、てんかんが疑われますが、脳腫瘍や脳卒中、もやもや病などが原因の症候性てんかんも考えられます。初めて発作を起こしたときには、脳の検査が必要ですので、症状が速やかに改善した場合でも、医療機関を受診してください。
また、片側の顔面に限局してけいれんがみられる場合には、顔面けいれんという病気の可能性があります。長期間放置していると、顔面に麻痺が出現し、顔の歪みが出てくることもありますので、顔面けいれんを自覚した際には脳神経外科受診をお勧めします。
また、けいれんと同じような症状に振戦(ふるえ)がありますが、けいれんの方が振戦と比べて運動の範囲が広く、筋肉の収縮が複雑になっています。振戦がみられる病気には、本態性振戦、パーキンソン病、甲状腺機能亢進症などがあります。日常生活に不自由を感じるほどのふるえがある方は、神経内科や脳神経外科を受診してください。
一時的に意識を失うことを失神といいます。失神は、脳への血流や脳の酸素・ブドウ糖が減ったりすることなどで起こり、脳自体が原因のことはあまり多くはありませんが、失神した後に頭痛や嘔吐、手足の動きが悪いなどの異常がある際は、脳疾患による可能性もありますので、早急に医療機関を受診してください。
失神の原因は、神経調節性失神が最も多く、他に不整脈や大動脈弁狭窄症、肥大型心筋症、肺塞栓症、低血糖などで起こります。
失神は危険な病気ではないこともありますが、特に繰り返す失神には危険な病気が隠れていることもあります。すぐに良くなったからと様子を見ずに、医療機関を受診し、原因を調べることをお勧めします。
本態性振戦とは、他の疾患などによる二次性の振戦が除外され、振戦以外の所見がない、原因不明の振戦のことです。
家族歴が見られることが多いため、遺伝的要素が示唆されていますが、遺伝子の確定には至っていません。
振戦が認められる疾患としては、パーキンソン病が有名ですが、パーキンソン病で認められる振戦は静止時振戦といって安静な状態の時に起こり、本態性振戦は、姿勢時振戦に分類され、書字や箸を使う・コップを持つといった食事動作などでふるえが強くなり、緊張した時、疲れやストレスが溜まった時に増強します。飲酒により症状が軽減することもあります。
治療は、軽症の場合、交感神経遮断薬のプロプラノロールや抗不安薬などを頓服で使用します。中等症以上となり日常生活などに支障が出てきた場合で薬物療法の効果が不十分な時はボツリヌス毒素療法や手術などを検討することがあります。
神経調節性失神は、自律神経の乱れによって脳血流が低下し、一時的に脳が虚血状態に陥ることで失神する病気です。
神経調節性失神には、状況失神、情動失神、血管迷走神経反射、頚動脈洞失神などが含まれます。
状況失神とは、排尿・排便、激しい咳、ものを飲み込むなど特定の状況において生じる失神のことで、情動失神とは、恐怖や驚きなど、感情の起伏に一致して引き起こされる失神のことです。
頚動脈洞失神とは、頚部のマッサージやひげ剃り、頚部を回した時などに頚動脈洞が圧迫されることによって起こる失神です。
強い痛み、暑い場所、精神的なストレスなども神経調節性失神の誘因となります。
失神の前兆として、目の前が暗くなる、めまい、立ちくらみ、吐き気、冷や汗などの症状が現れることがあります。
失神の持続時間は長くなく、1分程度で意識が戻ることがほとんどです。
心拍数が高すぎたり、低すぎたりすると十分な血流を脳へ送ることができず、失神をきたすことがあります。
頻脈性不整脈の原因としては、狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患や心臓弁膜症、甲状腺疾患、電解質異常などが挙げられます。
徐脈性不整脈は、洞不全症候群や房室ブロックといった心臓の刺激伝導系の障害により起こります。
大動脈弁狭窄症は、心臓の弁の一つである大動脈弁が狭くなり、心臓から全身に血液を送り出すのが困難になる病気です。
息切れ、胸痛、足のむくみ、動悸、倦怠感、失神などの症状が認められますが、普段からよく座っている方や無意識に日常生活の運動量を減らしている場合には症状を自覚していないこともあります。
薬物治療で症状を抑えることはできますが、病気の進行を遅らせたり、治療したりすることはできないため、適切なタイミングで手術を行う必要があります。
肥大型心筋症は、寝室の壁が肥厚する心筋疾患です。通常左心室ですが、右心室または両心室が肥厚する場合もあります。心筋肥大は、心臓が血液を効率的に送り出すのを妨げる可能性があります。肥大型心筋症は、遺伝的要因と環境的要因の両方によって引き起こされることがよくみられます。
症状は、軽度から重度まで様々です。症状のない人もいれば、胸痛、息切れ、動悸、めまいなどを経験する方もいます。重度の場合は、心不全、失神、突然死につながる可能性があります。
肥大型心筋症は、心肥大をきたす原因となる高血圧や弁膜症がないにもかかわらず、心室の壁が肥厚する心筋疾患です。通常、血液を全身に送り出す左心室の心筋が肥厚します。悪化すると血液が出ていく部位が狭くなり、全身に血液が十分に送られなくなります。
症状のない人もいれば、胸痛、息切れ、動悸、めまいなどを経験する方もいます。重度の場合は、心不全、失神、突然死につながる可能性があります。
「エコノミークラス症候群」という名前を耳にしたことがある方の方が多いかもしれません。飛行機などで長時間座った体勢が続くと、下肢の静脈に血栓が形成され、深部静脈血栓症といった病気になることがあります。深部静脈血栓症になると、下肢の腫れ、痛みや皮膚が赤黒く変色したりします。この血栓が剥がれて血管の中を流れていき、肺の動脈に詰まることを肺塞栓症といいます。
肺塞栓症は、小さな血栓の場合、無症状のこともありますが、大きな血栓の場合、息切れや胸痛、ふらつきや失神がみられることがあります。
治療法としては、抗凝固療法、血栓溶解療法、カテーテル治療、手術などが血栓の場所や症状により選択されます。
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